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2010年10月から、最近の医療情報や病気の事、子育ての事、連携している児童発達支援施設「厚木なのはな」からの情報、「絵本の店 トロッコ」幸田さんからの絵本のお知らせなどを掲載した院内誌を発行しています。今月分はこちらから。

2017年9月号

ネット依存症について

8月19日厚木児童思春期精神保健講座が開催され、独立医療法人国立病院機構・久里浜医療センター院長の樋口進先生の「ネット・スマホ過剰使用の心・からだへの影響とその対応」についての講演がありました。ネット依存に関する治療専門機関は日本では非常に少なく、全国から受診する(集まる)ネット依存の患者さんを多く診ている先生の講演は大変勉強になりました。その中から、一部抜粋してお届けします。

<ネット・スマホ依存の現状>
■久里浜医療センターを受診する患者の特徴
・患者の半数は中・高校生
・低年齢のみならず20~40代の患者も増えており、年齢層が拡大(平均年齢19歳)最少年齢7歳
・男女比は9対1。男性はゲーム、女性はSNSにはまっているケースが多い
・年齢によって依存対象が異なる傾向
・スマホ依存が増えてきている
・新規受診患者の90%がゲームに依存。ゲーム依存の患者の98.9%がオンラインゲームに依存。1.2%がオフラインゲームに依存。

<インターネットゲーム依存の世界的実態>
・有病率:報告されている有病率:0.7%~27.5%、実際には1%~5%程度
・性差:男性>女性
・年齢:有病率は年齢が上がるに従い低下傾向
・地域に関する格差:アジアで特別高いわけではない

<ネット依存の症状>
■ネット依存の症状
・頭がネットで一杯
・使用のコントロールが出来ない
・長く使わないと満足できない
・使わないとイライラする
・ネットで気分が晴れる
・学校、家庭、社会での問題
・健康問題

■睡眠障害
・短い睡眠時間
・日中の居眠り
・昼夜逆転:引きこもり、日常生活に影響、体の発育にも影響

■体力低下
体を動かさないために、体が硬い、筋力の低下、持久力の低下、心肺機能の低下。
中には1食程度しか食べないので栄養失調となったり、同じ体制で座り続け褥創(床ずれ)を作っているケースもある。

■学業への影響
・遅刻、欠席
・成績低下
・留年、退学

■家族、対人関係への影響
・家庭内の暴言、暴力
・親子関係の悪化
・友人関係の悪化
・友人の喪失等

■親の問題と苦悩
・様々な家族問題
・親と本人の葛藤
・一方、親は疲弊している。何をどうしたらよいか分からない。落胆、絶望している。
・将来に対する強い不安がある

<ネット依存について>
■依存への過程
・軽い気持ちから始め、抜けられなくなる
・開始時は無料という事もあって気軽にネットゲームを始めるが、そのうちの何人かは、予想以上の感動が得られ、その快感を追い求めるうちにやめられなくなる
・他の依存症に比べ、短期間のうちに依存の状態になる

■ハマる理由
・達成感:長時間やればやるほどレベルが上がり、より困難な局面に勝利できる。時には失敗する事もある。達成感と喪失感のバランスがいいと、よりはまりやすい
・感動や友達など多くの物が得られると思う
・責任感:ゲームではチームで行動するので、自分の役割が確立している。途中で抜けると他のメンバーに迷惑がかかる
・コミュニケーション:ネット上では相手が魅力的に思える
・孤独の解消:友達が欲しくてネットを始めたと言う人は少なくない
・ハマるほどに空しさも強くなる:時間を無駄にした、やめようとしてもやめられなかった、などの自己否定感や空しさが強くなる傾向がある。その辛さからゲームに逃げるという悪循環に陥り、抜けられない

<ネット依存の進行度>
■第1段階 正常な使用(趣味レベル):自分の生活を豊かにするのに役立っている
・ただネットゲームやSNSが好きで楽しんでいる段階
・宿題や手伝いなど、優先すべき事をまずやって、空いた時間で楽しむ
・ネットの使用時間は2時間以内で、自分の意志でやめられる場合は、何の問題もない

■第2段階 グレーゾーン(習慣レベル):ゲームにハマりかけているが、おおよそ自分でコントロールできる
・暇さえあればゲームをしている
・時々、約束した時間よりゲームが長引く事がある
・日常生活にほとんど支障はなく、学校を休む事もない
・ネットにハマりかけている状態
・子どもに心配している事を伝え、ネットの使い方について話し合う

■第3段階 依存症(病気のレベル):さまざまな支障が出ているがやめられない
・何よりもネットが最優先
・約束の時間を超過していつまでもゲームをやっている
・勉強も食事もそっちのけでゲームをしている
・注意をすると逆切れする
・ネットにつなげられないとイライラする
・成績が落ち、休む事が多くなる
・この段階では迷わずに専門家に相談する

<ネット依存の治療>
・治療の基本は、本人が自分の意志で行動を変えて行くように援助する事。しかし、達成はなかなか難しい
・ネット依存に対する薬はない
・ネット依存からの回復の形はさまざま
・ネットゲームが他の“リアル”の活動に置き換わった
・ゲームをしているが、時間が短くなり、日常生活に支障を来さなくなった
・土日は夜昼関係なく使用し続けるが、平日はゲームはしていない

<スマホ・ネット依存の予防のために>
■学校・家庭での取り組み
・いつでも、どこでもできるのは依存になりやすいので、1日の中で全くネットを使わない時間を作る。学校、家庭なら親も一緒に
・ルール作りには子ども達の意向を尊重する

■ルール作りのポイント
(1).親の名義で購入し、子どもに貸し出す形に
・スマホ・パソコン・タブレット端末に関しては、子ども専用の端末を用意するのではなく、親の名義で購入したものを、一定のルールや条件をつけた上で、子どもに貸し出す形にする
・パソコンやルーター等のパスワードも親が管理する

(2).ルールは買う前に、親子一緒に決める
・ルールは親が一方的に決めてしまうのではなく、守る方(子ども)も、どうしてそのルールが必要なのか理解し納得して決めるようにする

(3).使用場所を決める
・子供部屋(自室)での使用は避け、リビングや家族の目の届く所で使用する
・充電器は親が預かり、充電するときはリビングか、親の部屋で行うようにする

(4).使用時間を決める
・例えば1日2時間、夜9時までというように、具体的に決める
・食事のときや外出時等、使用しては行けない時間帯も決める

(5).利用サービスについて決める
・フィルタリングを利用し、どんな内容のサービスは使用しては行けないのか話し合う
・アプリやサービスをダウンロードする時は、親の許可を得るようにする

(6).使用金額について決める
・有料ゲームやアプリをダウンロードしたり、課金をする際には、限度額を決めておき、小遣いの範囲に留めさせる
・親に無断でオンラインショッピングや決済をさせないようにする

(7).書面に残す
・守れなかったときはどうするかまで決め、必ず書面に残しておく
・冷蔵庫など目のつく所に貼っておく

(8).家族もルールを守りましょう
・子どもだけでなく、親もルールを守る
・家族や周りの人とのネットを介さないコミュニケーションを大切にする
・将来、自分でコントロールして、賢くインターネットを使用する大人になるための大事な練習期間

<依存に対応する>
■改善のための原則
(1).周囲からの制限は無効
・抜け道はいくらでもある
・子どもたちの方が、ネットにたけている

(2).本人に動き出させる
・健康な部分と手を組む
・疎通が良くならなければならない
・本人たちの言い分に耳を傾ける
・柔軟性を持って対応
・ヒントが必ずある

■早期発見・早期対応
(1).早期発見
・サインを見落とさない(遅刻、居眠り)
・ネット(特にゲーム)依存はすぐに深刻化
・適切な対応で、短時間に改善する可能性
・慢性化すると、改善が難しい

(2).早期対応
・指導よりもまず傾聴に心がける
・はまっている内容も聞いてみる
・依存の原因や背景が見えてくる
・関係ができれば指導が出来る

■依存の背後にある要因を探る
(1).現実が充実しているか
・依存に入り込む、立ち直るかの鍵
・充実していれば再発も少ない
・勉強、部活、友人関係… 
・少しでも充実させる工夫が必要

(2).依存に引き入れている要因はないか
・学校生活、いじめ、友人関係
・心理的特性(発達障害:衝動のコントロールが難しい、一つの事にこだわる、現実の世界での適応が難しいがゲームの世界では有名人になれるなど)
・家庭環境

■スマホ、Wi-Fiの取り上げ
(1).子どもの行動をある程度コントロール可能
・スマホ、Wi-Fiの取り上げは有効
・取り上げの期間を明確にする
・返す条件も明確にする
・ガラケーへの変更
・返した後に守れなかった時の処置も明確にする

(2).コントロール困難、激しいバトルの可能性がある
・取り上げ以外の方法を選択

■オンライン時間の取り決め
(1).成功しない事が多い
・本人が守らない(守れない)
・上手くいかないので周囲が諦める(何回も守れないなら、やらずに他の方法を考えた方が良い)

(2).本人の意向を取り入れる
・子どもの行動のコントロールが可能なら、親が主導するのもよい
・困難であれば、子どもの意向を取り入れる
・少しでも減らす移行があるなら、歓迎
・できたらほめる、できなければ再度相談
・はまっているネットアプリの話を聞くのもよい

■他の活動に置き換える
(1).ネットのできる時間を減らす
・学校の補習
・塾、予備校、家庭教師もあり
・アルバイトも歓迎
・周囲からの協力も必要

(2).興味がネットから他の活動へ移るのがベスト
・部活、ガール・ボーイフレンドなど
・一番多いのは勉強と進学
・友人、先生からの助言は有効
・「ほめる」事がミソ

<まとめ>
今までも、ネット依存に関する事をお伝えしましたが、今回樋口先生のお話を聞き、もっと「ネット依存」の事について、保護者の方やお子さんと関わる人たちに理解して欲しいと思いました。本文にありますが、「依存」は、いつでもどこでもできる状態だと、起きやすくなります。毎日できることが依存の始まりの可能性がありますので、平日はやらずに土日だけたっぷりやるのも一つだと思います。また、予防のための約束作りのポイントがありますが、お子さんだけでなく親がルールを守る事も必要です。やらないと決めた時間には、お母さんたちもスマホを触らない事も必要です。まず、予防が大切で、依存が疑われた場合には早めに受診しましょう。

樋口先生のお話で一番印象深かったのは、「依存からの回復の形は様々」という言葉です。
また、ネット依存になっているお子さんの寂しさや辛さも感じました。お子さんを守るのは周囲の大人の役割だと思います。お子さんを否定するのではなく、お子さんの話をよく聞き、お子さんを認め、興味がネットから他に移るよう働きかけることも大切と思いました。
樋口先生監修のネット依存に関する本2冊を待合室に置きますので、ご覧下さい。

(馬嶋)

【参考資料】
第23回厚木児童思春期精神保健講座
独立医療法人国立病院機構 久里浜医療センター院長
樋口進先生「ネット・スマホ過剰使用の心・からだへの影響とその対応」
「ネット依存症の事がよく分かる本」 監修 樋口進 講談社
「ネット依存症から子どもを救う本」  監修 樋口進 法研

Yori道:秋の味覚

秋になりました。収穫の秋、サツマイモ、ジャガイモ、里芋、椎茸、ごぼう、れんこん、そして栗が美味しい季節です。生の赤唐辛子もあります。

最近は、栗おこわをよく作っています。栗を茹でて皮を剥き、もち米と一緒に蒸します。

ゆっくり包丁を栗にあて、何も考えずひたすら栗の皮を剝く時間と全て剝き終わった時の達成感が好きです。栗の色が少し移ったうすい黄色のもち米に、ごま塩をかけていただく時、初秋を感じます。

芋類は苦手な私ですが、去年からサツマイモを、水で濡らしたクッキングペーパーにラップを巻いて電子レンジで蒸す様になってから、サラダに入れたり、軽く塩をして、箸休めの一品など、楽しんで食べる事ができるようになりました。母はよく肉じゃがを作っていましたが、タマネギが入って柔らかく煮た肉じゃがが食べられず小さい頃はほとんど口にしませんでした。私が作る肉じゃがは、シャキッ!です。

椎茸は、椎茸ステーキ。少量のサラダ油で焼いて、醤油をかけるだけ。椎茸の甘みが美味しいのです。ごぼうは母がよく作ってくれた、我が家での名称の「ごぼうやん」。ささがきごぼうに、ひき肉を乗せ卵とじにしたものです。ごぼうの香りが漂う一品です。

れんこんは、栗原はるみさんのレシピで覚えた「牛れんこん」。れんこんは拍子切りにし牛肉と甘辛く煮たものです。家族皆が好きです。

生の赤唐辛子。色がきれいで形も可愛らしくて、去年から楽しんでいます。生の赤唐辛子で作ったペペロンチーノ。鮮やかな赤がパスタに映えて美味です。

(馬嶋)

厚木なのはなより 茶話会のお知らせ

9月の茶話会は「中学、高校の話をしよう!」といったテーマで開催します。
小学校を卒業すると、ますますお母さま同士の情報交換も少なくなってしまいがちですが、お子さんの通っている学校以外の所はどんな風に授業を進めてる?どんな配慮をしてもらってるの?支援学校の中学部は?卒業後の進路のその先はどういう日常?…と、聞いてみたい事がたくさんありますよね。ぜひ、お互いに情報交換をしていいヒントを見つけませんか?お気軽にお越しください♪

日 時9月27日(水)10:00~11:30
場 所なのはな栄町(厚木市栄町2-1-12光和エステートビルB-1)
参加費200円(お茶菓子代として)
定 員6名くらい(託児はありません)
お申込みの際に、(1)お名前(2)お子さんの年齢(学年)(3)ご連絡先をお知らせください。
申込み締め切り9月25日(月)
定員になり次第締め切らせていただきます
メールatsugi_nanohana@yahoo.co.jp
電 話厚木なのはな 046(404)0663
なのはな栄町 046(404)2237

(厚木なのはな 宇佐美)

たいせつな人と、たいせつな時間を絵本とともに

馬嶋医院 今月のお薦めの絵本は「モカと幸せのコーヒー」
作:刀根里衣
出版社:NHK出版
なにもやる気がでずに眠ってしまった青年の前に突然現れた、白くて小さなうさぎのモカ…。「とっておきのコーヒーをごちそうする」と夢の世界に誘われ、青年は、忘れてしまった自分の世界へ…。疲れてしまった大人の心を癒してくれる、ボローニャ国際絵本展入選の作品が絵本になった素敵な物語です。

(絵本の店トロッコ 幸田)



編集後記

今月号のテーマは、ネット依存症に関するものです。
インターネット環境はこの四半世紀ほどで急速に発達し、今や私たちの生活に欠かせないものとなりました。幼い頃から、スマートフォンやゲーム機が身近にある環境に身を置く現代の子どもたち。便利な反面、使い方が適切でないと心や身体の発達にも深刻な影響を及ぼすことがあるのですね。編集作業をしながら、いろいろな側面があることを考えさせられました。(杉)

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