トップページ > まじまじ通信2017/11月号

2010年10月から、最近の医療情報や病気の事、子育ての事、連携している児童発達支援施設「厚木なのはな」からの情報、「絵本の店 トロッコ」幸田さんからの絵本のお知らせなどを掲載した院内誌を発行しています。今月分はこちらから。

2017年11月号

愛着形成について

10年くらい前、医師会主催の講習会に来て下さっていた精神保健師の上原文さんが、最近「気になる子にはこう対応してみよう」という本を出されました。その中に愛着形成について書かれています。上原氏は著書の中で、「『愛着形成が不十分だった』と思われる子ども達の問題を先に書こうと思います。なぜならこのタイプの子どもの方が何倍も多く、ますます増えているように見えるからです。そして、このことを子どもを持つすべての親、そして子どもたちに接するすべての保育者に知って欲しいからです。」と書かれています。私からもこのことについては、是非多くの人に知っていただきたいと思い、今回は「愛着形成」についてお伝えします。

<心の発達で最も重要なところ>
エリクソン、ウィニコットなど、多くの精神科医や心理学者がいっているように、心の発達の中で最も重要な時期は0~1歳半(学者によっては2歳)までです。記憶に残らないこの時期の体験が人格をつくるといわれています。エリクソンはこの時期に得る心の奥の安定感を「基本的信頼感」と名付けました。またウィニコットは「基本的安心感」と名付けました。

<伝えられていない子育ての基本>
0歳から2歳までは自分では何もできない時期、つまり「すべてのことを外の世界に頼らないと生きていけない時期」であり、「泣くこと以外、無力」な時期です。これを「絶対依存の時期」といいます。この時期は、「すべてを受容」してあげる、「絶対受容」のかかわりをすることで、基本的信頼感、基本的安心感が得られます。泣くこと以外無力ですから「お腹がすいた」「おむつが濡れた」「暑い」「寒い」を泣くことだけで表現します。(ことばは発しなくても、快・不快の感覚は最初からあります。)「泣いたらすぐ行って、泣いたことの意味を理解して対応してあげる」ことが必要なのです。自分が要求したことに外の世界が応えてくれた経験の積み重ねで、「外の世界は自分の要求をかなえてくれる」という安心して依存できる心の奥の安定感が生まれるのです。逆に「泣いても泣いても要求がかなえられない」ことが重なると、外の世界に対する不信感が生まれます。自分が頼んでもかなえられないわけですから、心の奥に不安感が生まれてしまうのです。

頼んだことをやってもらえたことで心の奥深くに生まれた自信は、私たちが考える以上に根源的なもののようです。後年いろいろな挫折にあって落ち込んでも、また新しい方向に努力することができる自分への自信の源といわれています。「望むままに受けとめる。望んだ形で受け容れる」「ありのままを受け容れる」。これが「受容」です。  この子育ての基本である「受容」とその内容について、全てのお母さんに伝えられていないことです。核家族が進み、地域のつながりも希薄になる中で、ネット上のタレントの子育てブログを参考にしてしまう母親も多いと聞きます。

妊娠すると役所に「母子手帳」を受け取りに行きます。その後、自治体によっては4~5回の母親教室がありますが、ほぼ妊娠中の過ごし方に焦点が当てられているようです。最終回は父親も含めての沐浴指導であったりします。もちろんそれも大切です。しかし、もっと大切なのは、生まれて6ヶ月以内ぐらいの子を持つ両親に「子育てについて」勉強会を実施することではないかと、と私は強く思っています。「初期の受容の重要性」について学ぶ機会の提供です。

<うまく受容されなかった時>
心身症は、心の問題が原因で身体的な症状があらわれる状態をいいます(指しゃぶりや爪かみなどは心身症ととらえなくていいのかもしれません)。また、おもらしや夜尿症は排泄が自立してからのことです。チックや吃音は心の問題だけが原因ではありません。このようなことがあるので簡単には書けないのですが、子どもは心と体がうまく分化していないので、ストレスが身体症状に出てきやすいのです。それに、子どもは「ストレス」や「悩み」ということばを知らないため「いやだなぁ」という状況をはっきり自覚できないのです。自覚できないから解消の手段がありません。だから、小さなことでも体に出てきやすいのです。

<子どもから見て、自分が拒否されていると思われている状態とは>
「子どもが望む形で受容する」とは、どんなことなのか、親に伝えるのはとても難しいです。親が一生懸命育児をしていても、子どもから見ると親から拒否されているという状態があります。

(1)怒りすぎる親
怒りすぎる親から愛情を感じるのは難しいことです。子どもはシンプルな愛され方が好きです。抱っこ・頬ずり・話を聞いてくれる・一緒に遊んでくれる、などです。ほんとうに好きなのは、ささいなことを自分のためにしてくれることなのです。ひねりのある愛情表現はおとなの側が考えていることで、子どもには理解できません。「あなたを愛しているから怒るんだ」とか、「私の後ろ姿を見れば子どもはわかってくれるはず」などがそれにあたります。

(2)あっさりしすぎる親
大人同士でも、顔の表情が乏しい人と話すと緊張しませんか?この人は私のことばを肯定的にとらえてくれているのだろうか、受け容れてくれているのだろうか、と不安になります。ましてや子どもは、母親の表情が乏しければ、気持ちを感じることはできないのです。園でも、わかりやすい柔和な表情の保育者のクラスは安定しています。母親が自分と一緒に笑ってくれたり、感心してくれたり、表情を豊かにしてくれたら、子どもはどんなに安心するでしょう。

(3)完璧主義の親
完璧主義というのは決して悪いことではありません。仕事などでは責任を全うするタイプでしょうし、いろいろな役割をお願いしてもきちんと果たしてくれるでしょう。でも、子育てにおいては違います。子どもはもともと不完全な存在です。子どもが一生懸命はいた靴下を「一人ではけたのね」とほめる前に、「曲がっているじゃないの」と言ってしまったら、子どもはどんなにがっかりするでしょう。自己不全感でいっぱいになってしまいます。

(4)その子よりも他のものに気持ちがいく親
これは一番重要なところです。子どもは基本的に「自分だけを見ていてほしい、自分だけを受け容れてほしい」と強く思っています。子どもだけでなく、人は皆そうなのです。
自分だけを受け容れてくれたという思いは人を安定させます。だから、「みんな一緒」「みんな同じ」はみんなを欲求不満にしてしまうのです。自分以外のものに気持ちがいくことをとても嫌います。たとえば母親が長電話をしていると、子どもは自分のほうを向かせようと、わざと何か聞いてきたり騒いだりします。
母親が仕事をしている場合もこのケースに入ります。仕事を持つと、子どもを預ける時間は長くなります。帰宅して家事をする時間も必要です。「仕事と育児の両立」について、きっぱり割り切る人もいますが、割り切らずに、迷いながら、悩みながら、工夫しながらいくほうがよいと思っています。母親が仕事を持つということは、子どもからすれば、自分以外のことに気持ちが向いている、ということでもあります。愛着についての工夫が必要です。また、小さい子がいる場合の就業の時間短縮や補助金なども検討し、子どもの安定を最優先して母親の支援を考えていかないと、大変なことになってしまいます。

(5)その子の状態より高みを望む親
親なら「もっと上」を望むのは当然でしょう。しかし、あまりに「強く」「長く」そう思うのは「現状を絶対認めない」というのと同じです。高い目標を置いた厳しい育児で、伸びる子がいるかもしれません。しかし、ほとんどの子はそういう緊張感の中では力を発揮できません。跳び箱でも「1回しか跳んじゃダメ」と言われると失敗してしまうけれど、「跳べるまで何回やってもいいよ」と言われると、いつのまにかできるようになります。ほめながら、余分な緊張感を与えずに育てたほうが、たいていの子どもはうまくいくのです。

以上、上原文著「気になる子にはこうして対応してみよう」から一部抜粋でお伝えしました。紙面の関係で省略した部分があり、上原氏の思いとは違う面を伝えてしまった かもしれませんが、お子さんにとって、特に乳幼児期に十分愛される、満たされることはとても重要です。出産後のお母さまたちは、ホルモンの問題や、慣れない子育てで、お子さんの要求を十分にかなえることができない状況のこともあると思います。そんなとき、周囲のご主人様やおばあさまたちがお母さまを支えることが重要なのだと思います。

上原氏の本にありますが、仕事を持つお母様たちが増え仕事と子育てに追われることが多いと思います。その時には、お子さんにとっての受容の重要さを忘れず、少しの時間でよいので十分お子さんとの時間を過ごして欲しいと思います。その時も、お母様を周囲の人、そして社会が支えなければならないと思います。

馬嶋医院の待合室に上原氏の本を置きました。ご一読いただければ幸いです。

(馬嶋)

【参考文献】
原文著「気になる子にはこうして対応してみよう」(世界文化社)

Yori道:便利な世の中

今月は私の誕生月です。もうあまり嬉しくないけれど、今は人生90年の時代。健康管理に気をつけて、元気に過ごしたいと思います。沢山先輩の方々はいらっしゃるけれど、長く生きてきたように思います。そして便利な世の中になりました。

小さい頃は、蛇口をひねってもお湯は出ず、寒い朝、金だらいに母が熱いお湯を入れてくれて、そのお湯を使いながら顔を洗ったものです。たらいから立ち上る湯気が今でも思い出されます。

どんどん便利な世の中になりました。
一番はスマートフォンでしょうか。電話はもちろん、メール・家族とのLINE・検索・写真・乗り換え案内、そして道案内。方向音痴の私は、携帯電話を握りしめ、案内通りに歩けば無事目的地に着く事ができるようになりました。

パソコン、インターネットの普及も素晴らしいものがあります。そして掃除用具。100円ショップにも売っているメラミンスポンジとマイクロファイバー繊維で出来ている雑巾。洗剤を使わなくても、きれいに汚れが落ちます。考案 された方はすごいなと思いながら、壁の汚れ等を落としています。苦手な掃除も少しは好きになりそうです。

いろいろな事が変わりましたが、変わって欲しくないのは、自然と人の心。隅々まで耕されている田畑、美しいです。いつまでも美しい日本であって欲しいと思っています。

(馬嶋)

厚木なのはなより 茶話会のお知らせ

前回の茶話会に引き続き、「中学、高校の話をしよう!」といったテーマで開催します。
中学卒業後はさらに進路の選択の幅が広がります。支援学校(養護学校)、支援学校の分教室、私立高校、サポート校など様々な選択肢の中から、お子さんにとって豊かな学校生活が送れるような場を選びたいですね。支援学校高等部での実習なども興味深い内容ですよ♪どなたでもご参加いただけますのでお気軽にお越しください。

日 時平成29年11月22日(水)10:00~11:30
場 所なのはな栄町(厚木市栄町2-1-12光和エステートビルB-1)
参加費200円(お茶菓子代として)
定 員6名くらい(託児はありません)
定員になり次第締め切らせていただきます。
申込み締め切り11月20日(月)
お申込みの際に、(1)お名前・(2)お子さんの年齢(学年)・(3)ご連絡先をお知らせ下さい。
電話厚木なのはな:046(404)0663
なのはな栄町:046(404)2237
メールatsugi_nanohana@yahoo.co.jp

(厚木なのはな 宇佐美)

たいせつな人と、たいせつな時間を絵本とともに

馬嶋医院 今月のお薦めの絵本は「10ぱんだ」
文:岩合日出子
写真:岩合光昭
出版社:福音館書店
「らくらく、きのぼり、1ぱんだ」に始まるリズム感あふれる言葉、そして、かわいいパンダの写真。巻末には「しりたいこと10」も掲載されていて、パンダの秘密もわかります。最後の「10ぱんだ」は10匹の赤ちゃんパンダが並んで寝ています。その姿には大人も癒されます。数も学べるパンダの写真絵本です。

(絵本の店トロッコ 幸田)



編集後記

今月号のメインテーマは、「愛着形成について」でした。「オギャー」とこの世に産まれてくる赤ちゃん。初めはお腹が空いても、おむつが汚れても、泣くことでしか自分の意思を伝えられません。この時期に、そうした欲求を十分に満たされることが、その後の人格形成に大きく関わるのですね。これは、馬嶋先生がいつも言っておられる「自己肯定感」を高めることにもつながっていくのではないかな…と感じました。(杉)

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